コンサート
The Beatitudes
【12月19日公開】

新型コロナウイルス感染症が拡大している状況を受け、毎年6月に行っている東大駒場リサーチキャンパス公開が中止になりました。
先端研ではキャンパスへ来訪いただく代わりに、オンラインで先端研を楽しんでいただけるよう、本サイト「バーチャル先端研公開」を立ち上げ、研究活動を紹介するコンテンツを中心に提供していました。

キャンパス公開の企画として2年前から好評をいただいている「時計台コンサート」も開催ができませんでしたが、オンラインで音楽をお楽しみいただけるようにと、6月のコンサートに参加を予定していた奏者を中心として先端研に集まり、感染防止対策を行いながら演奏の収録を行いました。先端研を撮影した映像とともに動画にしましたので、素晴らしい演奏だけでなく、研究所内の様子もお楽しみください。
皆様を再び研究所にお迎えし、コンサートを楽しんでいただく日が来ることを先端研一同楽しみにしております。

Youtube動画

楽曲について

今年はコロナ禍でリモートやバーチャルといった手法が普及して、テクノロジーを利用した新しいコミュニケーションのスタイルが出てきました。大学での授業もそうですが、今は、直接対面しないコミュニケーションの機会の方が多いかもしれません。芸術の世界でも、音楽を聴きたい、届けたいという人たちの想いにこたえるべく、リモートオーケストラや、 Web 配信のコンサート等、色々な方法に取り組みました。テクノロジーは日々進化しますが、やはりリアルにはリアルにしか出来ないことがあります。新しい試みを続けながらも、何を大切にし、テクノロジーの世界とリアルの世界をどう融合させるか考えていくことが、非常に重要だと考えています。

演奏したウラジミール・マルティノフの「The Beatitudes」は、あらかじめ録音された4重奏に、ライブの4重奏を合わせて演奏するという、一風変わった8重奏の楽曲です。つまり「テクノロジー」を使用して録音された演奏と「リアル」のライブ演奏による不思議なアンサンブルです。今回の動画では8人が同じ空間に存在しますが、元々は目に見える4重奏と、目に見えない4重奏の共演とも言えるかもしれません。
楽曲は、小さな希望が生まれるような静かな導入の後、録音された演奏にライブの演奏が重なり、まるで深層心理に働きかけるように小さな変化を加えながら、柔らかなメロディを何度も何度も紡いでいきます。
そして、曲尺のちょうど黄金比に当たる辺り(芸術的な黄金比は、視覚的な空間だけでなく、時間にも当て嵌まります!)、映像では上空を旋回しながら時計台を一回りする場面で、それまで主と従の関係であった録音された演奏とライブ演奏が、初めて同時にメロディを奏で、遂にクライマックスを迎えます。ここで両者の融合が生じ、「新しい展開」が生みだされ、そのまま幸福な時間が永遠に続いていくように楽曲は閉じます。この曲は、「テクノロジー」だけでも「リアル」だけでも成り立ちません。融合によって引き出される互いの良さや新しい世界を、ぜひ演奏からイメージしていただき、美しい未来に想いを馳せていただけたらと思います。

先端アートデザイン分野 客員研究員
近藤 薫(署名)
写真:バイオリンを構える近藤
楽曲 The Beatitudes
作曲 Vladimir Martynov
演奏 第1ヴァイオリン [Live] 福田 俊一郎
第2ヴァイオリン [Live] 城戸 かれん
ヴィオラ [Live] 藤村 政芳
チェロ [Live] 黒川 実咲
第1ヴァイオリン [Rec] 近藤 薫
第2ヴァイオリン [Rec] 小関 郁
ヴィオラ [Rec] 中村 洋乃理
チェロ [Rec] 矢口 里菜子
録音音響 村松 健(株式会社オクタヴィア・レコード)
制作協力 株式会社オクタヴィア・レコード
TOKYO VIDEO
プロデュース 近藤 薫(先端アートデザイン分野 客員研究員)
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